経営者の立場からみた企業の競争戦略

2月2日付の私の初回ブログを読んでいただいた方、
ありがとうございました。
今後は、月に二度ぐらいの頻度で書いていくつもりです。

お話したいことは、山とあります。例えば、米国の上場企業の社長 (COO) としての経験とか、日本の通信会社の再生とか。 聞いてみたいと思われるテーマや事項がありましたら、当ホームページの『Q&Aメール窓口』から投げてみてください。

さて今回は、前回の続きということで、経営者の立場からみた企業の競争戦略についてお話します。

『戦略的経営ってどうやるの?』とよく聞かれます。
学問的には、一ツ橋大学の竹内弘高教授や Harvard Business School の Michael Porter教授の書籍や講義が最も抽象化が進んでいて、分かりやすいと思います。実務に即、応用可能な知識を習得できますので是非勉強してみてください。

それから、世界中、戦略が無くて困っている会社は稀だと思います。絵に描いた戦略が実現できなくて困っている、あるいは倒産していく会社は山とあります。戦略とはそんなものだと思います。

それでは、私がどのように考えているかをお話します。

(1) 基本: 経営には OE 型、 SP 型、 ”Me-Too” 型がある。
Deming 派みたいな経営が Operational Excellence、OE 型経営です。 “We do things better!” とアピールする企業経営です。
もう一方の SP、Strategic Positioning 型経営は言わずと知れた Porter 派の経営で、“We do different things!” とアピールします。
第3の経営は "Me-Too" 型、つまり二番煎じあるいはコピー・キャット型と私は呼んでいます。

(2) OE 追求型企業経営
経営に興味がある人は、 Operational Excellence と言う言葉の意味を多少なりともご存知だと思います。 OE 型経営は、『同じ事業を同業の他社より上手にやる』という経営です。
上場企業や大企業のほとんどが見かけ上この型です。と言うのは、あるレベル以上の事業規模を実現・維持していく為には OE 型が最も現実的で効果的だからです。オリジナリティーはあまりないけれど、みんなの Best Practice が使えるという巨大なメリットがあります。
ですから、 Best Practice に積極的な会社のほとんどは OE 型です。 OE は競争相手と自社を、顧客満足・製品の品質・財務成績・従業員意識などあらゆる分野で KPI 化し、ベンチマークし、数値目標を立て、自分が一番になろうとする経営です。
Best Practice と言う考え方は OE に原点があります。この Practice が、中では一番良いんだという訳です。
OE 経営のデメリットは、当然ですが、競争の同質化を生むということです。ですからいつかは、競争優位性・継続性・利益性に限界がきます。
Best Practice もそれを全同業社が取り入れてしまったら、皆同じで、 ”Best” という競争差異にはなりません。経営にノーベル賞がないことがそれを証明しています。
Best Practice とか Core Competence とかといった考え方が取り入れられた最近の企業経営では、集団としての人間組織の能力には目立った優劣は顕われず、競争の同質化により同業者は皆同じという結果に至り、残される差別の手段は単純値下げ競争による世紀末的な Survival Game です。
従って、そうなってしまった(そこまで成熟・加齢してしまった)事業をそのまま継続すれば、やがて自社だけでなく他社も儲からなくなるという袋小路に入ります。

(3) SP 型経営
最近、分かりやすい例が出てきました。 APPLE です。三つの IP、iPod・iPhone・iPad で他の PC の会社がやっていないことを始めて大成功していますよね。
多分、彼らの OE 経営の Exit として SP に至ったんだと思います。 SPは創造性という才能がなければ出来ないので、潜在的 SP パワーがあったんですね。そう言えば、 DTP の歴史を見ると APPLE が SP リーダーでしたね。
他社とは違うゲームの選択。できたらかっこいいね。皆さん、APPLE の時価総額が IBM や GOOGLE よりも大きくなったのをご存知ですか。
APPLE の3つの iPxxx シリーズ製品は、 Seeds Driven と言うより、明らかに Needs Driven ですよね。 MP3 の潜在拡大ニーズ、 Cell Phone の潜在拡大ニーズ、 Viewer の潜在拡大ニーズをうまく捉えて製品化していますよね。創造性豊かで、メッチャ頭のいい人 (Head & Hands) がいるからできたんだと思います。

(4) Operational Strategy
多くの OE 型経営者は競争の同質化の壁をヒットする前に、更なるスケール・メリット(原価競争力、品質、価格リーダーシップ)を追い求め、他社を蹴落とす戦略に打って出ます。産業によっては、生産のモデルを受注生産型の簡易型 Configure to Order に切り替えることにより、受注応答を向上したり、在庫ロスを最小化したり、あるいは Sourcing や自社ではこれ以上原価改善できないプロセスを Outsource したり、あるいは顧客に対し直接効果のないビジネスプロセスを BPO (Business Process Outsourcing) したりします。いずれも狙いは原価競争力と需要(顧客)応答の改善です。
モノづくりの知恵比べとアイディアの実現能力(事業執行の優位性)で競争相手に差をつけようとするわけです。言い方を代えれば、 OE 型企業の差別化の主なる手段は生産の手段であると言えます。

(5) 拡大主義 DNA ・総合メーカー DNA
当然、先が見えてきた製品ラインを補う為の新商品ラインを追加する努力をします。
OE 型経営の商品戦略は、多くの場合、新技術による Seeds Driven な戦略です。言い換えれば、新商品による需要創造を試みるわけです。基本的にはこの繰り返しです。
競争の同質化は Core Competence の同質化でもあるので、同業者も、会社の従業員も皆同じ方向に同じ事を考えながら歩んでいることになります。ですから、ある会社が何か新しいものを発表すると “Me Too” が実に多いことが、このことを証明しています。
Time to Market が重要なのも、皆が同じモノをつくるからなのです。
このモデルで不採算事業ラインの Restructuring/Layoff という新陳代謝作用を取り払ってしまうと、事業は不採算でも、不退転、Never-Give-Up で頑張るという精神論で経済合理性を無視して継続し、加えて定年で退職する人以外は減らないので、人は増え続け、事業ラインも増える一方、子会社も気の遠くなるような数に膨張してしまうのです。
更に経営者が世襲的に選ばれるとなれば、先輩の始めた事業を清算するなんて事は会社が最終的に倒産でもしない限りあり得ないわけです。日本型 OE 経営の顕著な特徴です。この型の経営のメリットも当然あります。

さて、かなり長文になってしまいました。今回はここまで。
OE、SP、皆さんも考えてみてくださいね。

次回は、日米企業経営比較のアングルを書こうと思っていますが、緊急テーマとして、『もしも日本が日本株式会社であったら、どう再生しうるか? Game-Change Strategyはありうるか?』という質問も来ていますので、その話にするかも知れません。
また最近、『 JAL とか WILLCOM とかが倒産しましたが、あなたはどう思う?』とも聞かれていますので、これにも近い将来、触れてみたいと思っています。

それでは。

中根 滋